『紅雀と阿か枝』

 
『第19回 紅雀と阿か枝』に行く。
 
雀五郎さんは「みかん屋」。
厠から呼び掛けられたものの、事情が飲み込めず相手の姿が見えないので、心細くなっていくみかん屋の表情が真に迫っていた。
 
阿か枝さんは「千早ふる」。
まくらで出た話。
散髪は専ら明石でされているとの事。
理容師の方と(間があいた時期を含め)十数年のお付き合いだそうだ。
しかし、現在、阿か枝さんが噺家であることは相手に言っていないのだそうだ。
未だに理容師さんは、阿か枝さんが会社員だと思っているのだとか。
阿か枝さんの方もそれに合わせて会話しているのだそうな。
なんか可笑しい。
 
紅雀さんは「崇徳院」。
百人一首繋がり。
熊さんがお嬢さん捜しをあと一日残して家に帰ってきた際、お上さんが熊さんの事を気遣っている様子から、手抜かりを叱責するようになる緩やかな変化が上手い。
床屋にて、お嬢さん側の棟梁風の男と、床屋の大将との会話の場面。
棟梁風の男の話のなかに、崇徳院さんの歌そのものが出てこない演出。
これは個人的に納得できる。
床屋の大将も熊さんが店の中で崇徳院さんの歌を詠んでいたのを聞いていた筈で、棟梁の話に歌の文句が出た時に床屋の大将も気付きそうに思えたので。
 
中入りを挟んで、紅雀さんの二席目は「ろくろ首」。
お嬢さんがろくろ首だと聞いて、やもめ男が妄想する件が可笑しい。
首が伸びてさらに背中に負ぶさって云々、首が伸びて色が変わって壁にへばり付いて云々、ステッキ持って云々。
他の妖怪が混じったり、タイムリーねただったり、なつかしのアニメだったり、三様の繰り返しが面白い。
先のお嬢さんの傷の想像と合わせて、二段階の繰り返し演出、大変素晴らしい。
 
阿か枝さんの二席目は「佐々木裁き」。
奉行の見せ場が少ない。
四郎吉の方が、御奉行より一枚も二枚も上な感じである。
 

  • 桂雀五郎     「みかん屋」
  • 桂阿か枝     「千早ふる」
  • 桂紅雀       崇徳院
  • 桂紅雀       「ろくろ首」
  • 桂阿か枝     「佐々木裁き」